満を持して、世の中に登場した2ストロークEFIエンデュランサーが、SNSや雑誌の誌面を賑わせているのは、ダートバイクフリークならば周知のことでしょう。

我々、XCファンが2ストロークを存亡を意識したのは、もはや20年も前の話。90年代後半、あいついで環境対策のためにカタログ落ちしていく2ストロークトレイルマシン群の中、ホンダはAR燃焼を採用してCRM250を延命。しかし、あえなく短命に終わったのでした。その後もホンダは2ストロークの開発をし続けているという話が、近年までトピックとして上るほど。2ストロークは、言うまでも無く、「いまだに欲しいエンジン」であり続けています。
これは信頼筋から得た話ですが、KTMの今回のTPIは10年以上前から構想があり、開発が進んでいたそうです。5月中旬におこなわれたグローバルローンチでも、その片鱗である開発途中のダイレクトインジェクションがお披露目されているようですし、やはり信頼筋で「非常にEFI開発には苦労した。2ストロークらしさを出しきることが困難を極めた」とも聞いています。
小排気量・二輪・オフロード車であること
FI自体は新しい技術ではありません。
四輪では、とっくの昔にFIばかりになっているし、航空機では大戦前(!)から実用化されている技術。それでも、FIがオフロードバイクに対応してこなかった理由は、飛び抜けてその開発が難しかったからです。4ストロークのモトクロッサーがFI化する際も、非常に困難を極め、デビュー当時にXCに使ったライダーは相当に苦労を強いられていたのを、横目で見ていました。
2ストロークはその最たるもの。実に感覚的であり、さらにオイルを混合することや、機械バルブを持たないことから直噴エンジンをつくりづらいのだと聞いています。
ジミー・ルイスいわく

グローバルローンチに参加したダートバイクテストのJ・ルイスにコメントを求めたところ…「まず思ったのは、キャブとほとんど変わらないことだ。特に2017年でスムーズさを得たEXCとおなじく、全体的にフラットなトルクデリバリー。しかし、実際にはしっかりとFIらしさがある。4ストのFIと同じように、極低回転のほんの少しのスロットル開度でしっかりツキがあって、トルク負けしない」。少しレスポンスがシビアになることをジミーは言っています、逆にFIらしい瞬発力を発揮できるとも言えますね。「あと、多くのライダーにとって少しガスが薄いセッティングに感じるのではないかと思う」とのこと。このあたりは、かなりハードエンデューロを意識したセットアップになっているようです。
XCにおいて2ストロークは、すでにパワーと軽さにおいて優位性があるものの、ガソリン消費量とキャブ特有のボギングにデメリットがあったのは事実。しかし、FIになってこれらネガも消え失せていることでしょう。
デリバリーはそう遅くはならないはず。早く、乗ってみたいですねー。