
夏の恒例イベント、モトパワーレーシング主催の8時間耐久パワーエンデューロが今年は開催されないということで、再び開催できるようになるまではJNCCがそのレースフォーマットを引き継ぎ、8耐を開催することになった。
「爺ヶ岳で真夏に8時間耐久レース」そのインパクトに、多くのエンデューロ、クロスカントリーファンが飛びついた。
エントリー総数215台。1チーム最大3人までのエントリーで、1人で8時間走りきるアイアンマンも64台がエントリーした。集まったライダーは普段からJNCCにエントリーし爺ヶ岳を走り慣れている者から、モトパワー主催の8耐の流れでエントリーし、初めて爺ヶ岳を走るライダー、さらにはモトクロスばかりで耐久レースは何十年ぶり、という者まで多岐にわたった。
レース当日の天候は曇天。
夏にしては比較的涼しく過ごしやすい気候は、ライダーにとっては福音だった。コース中腹には無料でドリンクを振る舞う休憩所も設置され、自分のペースで走ることができたので、熱中症による被害は最小限に抑えられたようだ。
コースコンディションは一見ドライに見えて、走ってみるとツルツル、ガレガレ。ウッズの中だけでなくゲレンデの土も滑りやすくなっており、土に合わせて空気圧を落とすとガレでパンクするという悪循環に。パドックではそこかしこでパンク修理する姿が見られた。中にはガレ場で転倒し、クランクケースを割ってしまうチームも。しかしパテで応急処置してレースに復帰する姿は、さすがに耐久レースに慣れた猛者が集まっていると感じた。
今大会にはJNCCの呼びかけでアメリカのクロスカントリーレースGNCCから大物ゲストが参戦。今年のスノーシューでK・ラッセルをうち破り優勝したR・ラッセルと、その師であり、AAGPでもおなじみのR・ホーキンス。二人はそれぞれ、R・ラッセルはMOTOCOWBELL RTの阿部佑哉と、R・ホーキンスは和田屋SRCの和田孝平とチームを組んで出場した。
カテゴリーとしては「WORKS選抜」と呼ばれる賞典外のチームが3組エントリー。
ヤマハワークスとなるR・ラッセル、阿部佑哉組と、ハスクバーナワークスとなる小池田猛、原田健司組、そしてKTMワークスとして神馬健、神馬匠の親子ペアだ。残念ながらKTMの神馬ペアは一周目に息子の神馬匠が大クラッシュで肋骨を3本折る大怪我。父親の健がバトンを引き継ぎ、激走を見せるが3時間を過ぎたところで限界を迎え、リタイヤ。
ヤマハワークスとハスクバーナワークスは抜きつ抜かれつのトップ争いを見せた。
一周目から小池田とR・ラッセルが圧倒的なスピード差でレースをリードし、それぞれのチームメイトである原田、阿部も負けじとタイムを出し順位を維持する展開。7時間経過時点で小池田、ラッセルの差は1分以内の僅差だったが、そこからじわじわと差が開き、R・ラッセル、阿部佑哉組が勝利を手にした。
R・ラッセル
「初めてJNCC爺ヶ岳に来たのですが、とても楽しく走ることができました。これもレースを手伝ってくれた多くの方のおかげです。チームメイトもとても速かったので、勝つことができてハッピーです。ありがとうございました!」
阿部佑哉
「緊張とプレッシャーで8時間があっという間でした。シンコータイヤさんやチキンレーシングさん始め、いろんな人に助けていただいて、バイクもヤマハさんから出していただけて、こんな環境でレースをすることができて本当に嬉しかったです。ありがとうございました」
賞典外のWORKS選抜を除くと総合優勝を手にしたのは若干15歳の保坂修一、20歳の宇津野泰地の若手ペア、Team first penguin。
保坂は昨年、FUN-BクラスながらFUNクラス総合優勝を二度手にし、今年からCOMP-Aクラスに出場している若手最注目ライダー。宇津野も昨年のFUN-Aクラス年間ランキング3位の実力派だ。
保坂修一
「今日は比較的簡単なコースでしたが、時間が経つにつれハードになっていき、タイムが伸びにくい状態でした。お祭りなので順位関係なく、楽しく走るつもりでいましたが、思いの外、宇津野くんが順位を上げているので少しムキになって走っていたら、オープンクラスでトップになってました。そこで一致団結して優勝を目指しました。R・ラッセル選手はすごくキレのある走りで、周回遅れで見ましたが、登りであっという間に離されてしまいました。今回のレースで、体力不足、バイクを押さえ込む全身の筋肉のバランス不足など、改善点が色々見えてきましたので、改善してもっともっと上を目指したいと思います」
宇津野泰地
「コースがいつもよりも荒れていて大変だったのですが、保坂くんと二人で力を合わせて優勝することができました。タイヤはいつもシンコーさんを使ってるのですが、本当によくグリップして走れたのでよかったです! ありがとうございました」
もう一人の来日ライダー、R・ホーキンス、和田孝平チームは、序盤にいまいちペースが上がらず苦戦していたが、レース中盤から一気に順位をあげ、オープンクラスで6位入賞。
R・ホーキンス
「今日は本当に楽しく走れました。僕は何回かAAGPにも出てるので日本やこのコースにも慣れていますが、今日ここにいるみなさんと一緒に走れたことが本当に嬉しかったです。ありがとうございました!」
また、一人で8時間を戦い抜いたアイアンマンクラスは20位までが表彰された。その中でも1位の石戸谷蓮は総合でも7位に、2位の大神智樹は17位に入り、その存在をアピールした。石戸谷はJEC、JNCCともにトップランカーとして活躍し、来年はエルツベルグロデオ参戦も視野に入れている実力派。大神は今年のエンデューロ世界選手権イタリアGP参戦も記憶に新しく、急成長を遂げている注目ライダーだ。
石戸谷蓮
「応援していただいたみなさん、ありがとうございました。アイアンマンにエントリーしたら、「友達いないの?」なんて言われちゃって(笑)。一人で淡々と楽しく走ってたのですが、でもやっぱり4~5時間経ってくるとだいぶ飽きてきましたね(笑)。結局最後は37周も走ったので、しばらくこのコースはいいやって思いましたね。今回はチームで出た方も、次はアイアンマンで出てみると、本当の8耐の楽しさがわかるかもしれないので、オススメです」
大神智樹
「出場したみなさんお疲れ様でした。腕とか足とか、心身ともに疲れた一日でした。BEL-RAYさんからオイルを出していただいたりして、良い状況でレースができました。すごい休憩してたっていう蓮くんに負けたのがすごく悔しいので、また別の機会で蓮くんや他のみなさんと走れる機会があれば、また勝負したいと思います。ありがとうございました」