全日本クロスカントリーシリーズJNCCは第7戦シーサイドバレーを迎えた。新潟県糸魚川市にあるシーサイドバレースキー場でおこなわれるこのステージは、天気が良いと頂上から日本海を眺めることもでき、「天空のクロスカントリー」の異名を持つほど景観に優れている。

断続的に土曜日の午前中いっぱい降り続いた雨も午後にはあがり、日曜日は朝から快晴。暑いくらいの陽気の中でレースはおこなわれた。去年、雨上がりのヌタヌタで多くのスタックを生んだ新セクション「ジャングルダンス」がFUN-GPでも使われ、コンディションが心配されたが、一部湿ったところはあるものの、渋滞が起きるようなことはなく、全体的にハイスピードでしっかりと周回できるクロスカントリーらしいレースになった。
また、糸魚川のゲレンデには水切りの深い溝がいたるところに走っており、気持ちよく全開で走っていると、突然足を救われ大クラッシュ、などという話を耳にする。ハイスピードながら、絶えず集中力が求められ、凸凹の路面をうまくいなすことができないと、どんどんスタミナを削られてしまう。さらに、激下りセクションも健在で、後半の林道セクションもガレた下りが長距離続き、ライダーのスキルが試されるコースだ。
ここまでシリーズ7戦中6戦で優勝し、ランキング1位の小池田猛は、ここでランキング2位の渡辺学に勝利すれば年間チャンピオンが決まるというレース。小池田はここでFE250から新型のFE350にマシンをチェンジしてきた。
キッズ&トライ
まだ肌寒さも残る早朝におこなわれるキッズと初級者向けレース。とはいえ、幼い頃からバイクに乗るスーパーキッズたちはもはや大人顔負けの走りを披露してくれる。ベストコンディションの爽やかなゲレンデと、林道区間を繋いだ短めのコースが設定された。

今年、このカテゴリーで総合優勝を欲しいままにしているJH-Miniの廣田優大は2周目からトップを快走。危なげない走りでそのままリードを広げつつ、今大会も総合優勝を果たした。そして、もう一人JH-Miniで出場した15歳の橋場翔太も果敢に攻めの走りをみせ、総合5位に入った。
トライMenクラスでは岡本勝哉と日置高久によるトップ争いが白熱。日置が前に出て中盤までレースをリードするも、ついに終盤で岡本が日置をパス。今季4勝目をあげた。
廣田優大
「今日は下見をしていなかったので、2周目くらいまでは2〜3番手で走ろうと思っていたのですが、2周目でトップになってしまって、そのままゴールできました。FUN-GPも出たのですが、途中まではFUN-Dクラス9位くらいで走っていたのですが、ガス欠してしまって、降りてくるのが大変でした。次のAAGPではFUN-GPでも活躍できるように頑張りたいです。ありがとうございました」
岡本勝哉
「ありがとうございます。廣田くんになんとかついていこうと思ったのですが、日置さんを抜くのに手間取ってしまいました。子供の体力には叶いませんね」
日置高久
「みなさんお疲れ様でした。天気少し心配していたのですが、ピーカンに晴れて、暑いくらいですね。岡本さんとのバトルで熱くなりまして、最後には電池切れでした。岡本さんよりも年齢が一回り上なので、年寄りを大事にしてください(笑)」
FUN-GP
昨年はCOMP-GPのみの使用だった新セクション「ジャングルダンス」が今年はFUN-GPでも使われた。ここはゲレンデから頂上へと抜ける林間セクションだが、路面の水はけが悪く、まだ乾きが甘いレース前半では泥にタイヤを取られてスタックするライダーがいたようだ。しかし、他にはひどく渋滞するようなセクションもなく、比較的スムーズに周回することができたようだ。

FUN-Aクラスは序盤、大内健八が飛び出し、ハイペースでレースをリード。そこに山本正、川原茂広、加藤浩介、櫻井隆仁らが続いた。2周目で加藤が混戦を抜け出し、大内をパスするとそのままトップを譲らずゴール。2位には佐藤敬司、3位に山本正が入った。加藤はWEXで活躍するトップライダー、最終戦のAAGPには招待枠も決定している。
混戦のFUN-Bクラスはランキング1位の横山直が、今シーズン3勝目となるトップチェッカー。2位に橋本努、3位に野頭勝敏。FUN-Cクラスは田沼禎将がFUN総合でも8位に入る力走で優勝。FUN-Dクラスは注目の14歳、先日当サイトでも紹介した佐々木一晃が阪下以来のクラス優勝を決めた。
加藤浩介
「ありがとうございます。本当に嬉しいです。来年からJNCCの方に一生懸命出たいと思います。よろしくお願いします」
横山直
「みなさんお疲れ様でした。本当に楽しいコースでした。昨日雨が降ってどうなることかと思ったのですが、今日はベスコンで天気もよくて、気持ちよく走ることができました。マシンが2018年のニューモデルで、まだ慣らし一時間しかしていなくて不安でしたが、優勝できて良かったです」
田沼禎将
「ありがとうございます。運営者様や参加者のおかげですごく楽しいレースができました。去年からレース初めて、最初は3周しかできなくて、ここに立っている人が羨ましかったので、今日ここに立つことができてすごく嬉しいです。最近おじさんばっかりがすごいので、20代の若さを見せつけないと、と思って頑張りました。最終戦も頑張って走りたいと思います。ありがとうございました」
佐々木一晃
「お疲れ様でした。前の月山では最終周でエンジンが壊れてしまって、悔しい結果に終わったのですが、今回は気持ちよく走れて、優勝できて良かったです。応援ありがとうございました。」

注目のFUN-WAクラスでは昨年のチャンピオン菅原悠花が総合でも12位に入る走りを見せて、第1戦阪下以来の今シーズン2勝目をあげた。また、2位の石本麻衣は最終戦を残して念願の年間チャンピオンを決め、来年のAAGP派遣の切符も手に入れた。FUN-WBクラスはベテラン古川早知子がランキング1位の関山海生子を抑えて優勝。FUN-WDクラスでは吉田夢海がウーマンクラス総合でも5位に入る走りで今シーズン3勝目、クラス年間チャンピオンを決めた。
菅原悠花
「お疲れ様です。久しぶりに優勝することができて、本当に嬉しいです。コースも開け開けで、ずっと楽しくて乗れたので、本当に良かったです。また次も最終戦で勝てるように頑張りますので、よろしくお願いします」
古川早知子
「10代から50代までいますけど、私は60代です。60代でも頑張ったらやれるということを証明できたと思いますので、身体が動く限りJNCCも参加して頑張りたいと思います。また見かけたら応援よろしくお願いします」
吉田夢海
「お疲れ様でした。前回はけっこうトラブルだらけで大変だったのですが、今回はなんと一回も転ばずに走りきることができ、とても楽しかったです。いつもお世話になっているELFオイルさん、RKチェーンさん、EXCELさん、ハスクバーナのみなさん、本当にありがとうございました」
COMP-GP
一部、午後になってもコースコンディションが回復せず、COMP-GPはセクションがカットされてレースがおこなわれた。全クラスの中で唯一、激下りセクション「BANZAIクライム」を使用し、ハイスピードかつハイリスクなレースとなった。

トップカテゴリーのCOMP-AA1クラスでホールショットを獲ったのは鈴木健二。すぐ後ろに渡辺学、斉木達也、小池田猛と続いた。一周目のバトルを制してトップで戻ってきたのは斉木。見応えたっぷりな小池田、渡辺、斉木の三つ巴のバトルが続き、3周目に突入したところで斉木がまさかの大クラッシュを喫し、優勝争いから脱落してしまう。

小池田はその後リードをじわじわ広げ、レース中盤では2位の渡辺に1分以上の差を築いたものの、終盤には渡辺の猛追にその差を18秒まで縮められることに。しかし最後は小池田がきっちり逃げ切って、これでシーズン6勝目。ハスクバーナに、初めての全日本タイトルをもたらした。

2位には渡辺学。3位はこちらも鈴木健二と出口隼飛が激しいバトルを展開したが、出口がラスト40分でフロントタイヤをパンクしてしまい、ペースダウン。鈴木に軍配が上がった。出口はそのまま走りきり4位。また、石戸谷蓮とのバトルを制した小林雅裕が5位に入った。

小池田猛
「みなさん応援ありがとうございます。今回新しい2018年モデルのFE350がすごく調子よくて、気持ちよく走ることができ、シリーズチャンピオンを獲得することができました。ハスクバーナのスタッフのみなさん、スポンサーのみなさん、ありがとうございました。また最終戦も外国人選手がきますので、力一杯戦いたいと思います。どうもありがとうございました」
渡辺学
「みなさん応援ありがとうございました。みなさんが見てるところだけでも頑張って目立てればいいな、と思って走りました。久しぶりに3時間フルに攻めて走ったのですが、爺ヶ岳ももうちょっとできることがあると思いますので、最後まで頑張って目立つような走りがしたいと思います。応援ありがとうございました」
鈴木健二
「今日も応援ありがとうございました。最初の一時間くらいはサスのセッティングを失敗してしまって、ピット入って緩めて走ったらやっとまともに走れるようになりました。ちょっと自分のミスが多かったので、最終戦ではちゃんと自分の走りができるように頑張りますので、みなさんまたよろしくお願いします」

また、COMP-AA2クラスは今シーズン最多の5台がエントリーした。今年は広島以外すべて参戦しているベテラン、渋谷清幸が去年に続いてこの糸魚川を制した。
伸び盛りの若手が切磋琢磨するCOMP-AクラスではモトクロスIAの村上洸太が、ランキング上位の中島敬則と阿部佑哉を抑えて今シーズン初優勝。総合でも7位に入る走りで、AAクラス昇格への切符を確実なものにした。またCOMP-Bクラスでは爺ヶ岳8耐でアイアンマン2位に入った大神智樹がJNCCで初めてのクラス優勝を飾り、COMP-Rクラスは樋口翔馬が、こちらも初優勝を手にした。
渋谷清幸
「お疲れ様でした。前回の月山くらいから調子が出てきたのですが、ジョニー佐藤選手が月山で一回も転ばなかったと聞いて、今日は一度も転ばずに走ろうと頑張ったのですが、何回か転んでしまいました。結果的に優勝できたので、良かったです。ありがとうございました」
村上洸太
「みなさんお疲れ様です。今回COMP-Aクラスで走り始めてから初優勝ということで、AA昇格も決まったので、良かったです。サポートしていただいたみなさん、ありがとうございました。最終戦では順位とか関係ないので、攻めて攻めて、前の6台に食い込んでいけるような走りができるように頑張っていきたいと思います。爺ヶ岳も応援よろしくお願いします」
大神智樹
「ありがとうございます。実は今回がJNCCで初優勝ということで、自分でも驚いています。やっとクロスカントリーの走り方がわかってきたのかな、と思います。ハスクバーナのみなさんがフォームなどの指摘をしてくださったおかげでここに立つことができました。COMP-Aで走れるように、次も頑張りたいと思いますので、応援よろしくお願いします」
樋口翔馬
「ありがとうございました。今回僕も初優勝で、前回は2位だったのですが、その時に表彰台で次は優勝するぞ、と言ったので、念願叶いました。応援してくださったチームのみなさん、ありがとうございました」