JNCC最終戦AAGP爺ヶ岳レポート「驚異のスピードとスタミナ、リッキー・ラッセルが爺ヶ岳を完全制覇」

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今年は全8戦で争われる全日本クロスカントリーシリーズJNCCは、いよいよ最終戦AAGP国際大会を迎えた。今大会はクロスカントリーの本場アメリカのGNCCからAA1クラスにリッキー・ラッセル、AA2クラスにレオナルド・ライアンを迎え、日本人トップライダーとの熾烈なバトルが期待された。

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リッキーは8月に同じ爺ヶ岳スキー場でおこなわれた8時間耐久レースにも来日しており、賞典外とはいえCOMP-Aの阿部佑哉とチームを組んでトップチェッカーを受けた。その長い手足を生かしたスムーズながらもダイナミックな走りは8時間耐久に参加した多くのライダーの記憶に新しいところ。迎え撃つ日本トップライダーはすでに2年連続の年間チャンピオンを決めた小池田猛、シーサイドバレーで「最終戦でも目立つ走りをしたい」と抱負を語ってくれた渡辺学、得意の爺ヶ岳で一勝を掴みたい斉木達也、前週にはG-NETハードエンデューロにも参戦し、小指を負傷しながらもなお士気の衰えない鈴木健二ら。

今大会はこれまで使われてこなかったルートを使った斬新なレイアウトが採用され、爺ヶ岳のフィールドを知り尽くした日本人ライダーにも新鮮なコース設定となった。

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土曜日にはもはやAAGP恒例となった選抜ワイルドクロスが開催。各地域から選ばれたライダーがチームを組んだ選抜チームや、仲間同士で誘いあったクラブチームがジャンプやタイヤ越えなどのある特設フィールドでリレーレースを争った。リッキー・ラッセルや小池田猛、渡辺学などトップライダーも混ざり、さらには全日本モトクロスレディスから畑尾樹璃、レジェンド増田一将も参戦し、見ごたえのあるレースに。

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総合優勝は斉木達也率いるクラブチーム「フレアイカチとBONSAIjon」、選抜チーム優勝は小池田猛率いる中部信越となった。

キッズ&トライ

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11月早朝の爺ヶ岳、凍てつく寒さの中キッズクラス6台を含めた26台が集まったキッズ&トライ。

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今シーズンここまで全戦で総合優勝を獲得、FUN-Dクラスでも表彰台に姿を見せ始めている廣田優大がスタートから飛び出してレースをリード。一周目から30秒以上の大差をつけて独走体制を築いた。廣田はその後もキッズライダーのみならずトライクラスのライダーも寄せ付けずトップチェッカー。SK-Miniクラスは横山朋樹が10周を周り、総合でも5位に入る走りを見せて優勝。

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トライMENクラスは今シーズンずっとトップ争いを繰り広げてきた日置高久と岡本勝哉が最終戦にふさわしいベストバウトを繰り広げた。数秒差で日置が前に出て、岡本がすぐ後ろで隙を伺う気の抜けない展開。レースも終盤となる9周目についに岡本が日置をパスして前に出るが、次の周でまた日置が逆転。そのままトップを守り1秒差でチェッカー。
トライWOMENはシーサイドバレーに続いて池知美が優勝し、年間チャンピオンを獲得。

廣田優大
「コースが前よりも難しくなっていて、けっこうツルツルでした。リアブレーキが一周目から効かなくて焦りましたが、1位でゴールできたのでよかったです。今年一年全部総合優勝することができました。来年はFUN-Dクラスで頑張ります」

横山朋樹
「応援してくれたみなさん、ありがとうございます。来年も1位取れるように頑張ります」

日置高久
「みなさん応援ありがとうございました。岡本さんと最高のバトルができました。一回抜かれて離されてしまってダメかな、と思ったのですが岡本さんがいい人なもんでバテてくれまして、お先に行かせてもらいました。ところが最終ラップの最終コーナーで岡本さんが仕掛けてきて、僕も負けていられないとなんとか逃げ切れました。年間チャンピオンは岡本さんに取られてしまいましたが、僕も一年間それなりに走れて大変よかったです。また来年もそれなりに頑張りたいと思います」

池知美
「前よりも難しいコースでした。優勝できて嬉しいです。どうもありがとうございました」

FUN-GP

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500台近いエントリーがあった今大会の中でも、もっとも多くのライダーが走るFUN-GPは全クラス合計で277台がエントリー。ライダーのレベルもまちまちのためスピード差も大きく、同クラスのライバルだけでなく周回遅れのライダーをパッシングする技術も問われる。特に爺ヶ岳名物のFUNガレクライムでは毎周その並びを変える大小の石に阻まれ転倒、スタックするライダーが続出。間隙を突いてクリアする走破力が求められた。

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シーズン途中からのJNCC参戦ながらシーサイドバレーで総合優勝を果たした加藤浩介が今大会もFUN-Aクラスに出走。ウッズやロックンロールリバーでは他ライダーが走らないラインをうまく使い、2位以下に2分以上の大差をつけて優勝。加藤はJNCCの入門者向けクロスカントリーレースWEXで腕を磨いてきたライダー。来シーズンはCOMP-GPへの出場も匂わせており、トップライダーの仲間入りを果たすのは時間の問題か。

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FUN-Bクラスではシェルコジャパンの秋山真力がFUN-B表彰台常連ライダーを押しのけて優勝。JNCCではエントリーの多くないシェルコだが、その性能の高さを存分にアピールした。

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FUN-Cクラスを制したのはジュニアクロス関東選手権ランキング3位の高師永潤。スタートで出遅れるもさすがにスピードでぐんぐん追い上げ、中盤にクラストップに立つとさらにペースを上げてそのままチェッカー。Cクラスで唯一8周を走り、FUN-GP総合でも13位に食い込んだ。

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FUN-Dクラスは地元月山でも優勝したチキンレーシングの西岡俊康が優勝し、年間ランキング1位でシーズンを終えた。

加藤浩介
「お疲れ様でした。ハイスピードなレースだったので、腕が上がってしまって後半、ロックンロールリバーで転ぶという大失態をして、バイクも傷んじゃったので、来年はその辺をしっかり体力作りをして頑張りたいと思います。来年はCOMP-GPに挑戦します」

秋山真力
「ありがとうございます。怪我もパンクもなく無事に走れてよかったです。シェルコは軽くてトルクもあり、楽に走ることができました。JNCCではあまり見かけませんが、トルク重視のエンジンで車重も軽く、非常に扱いやすく良いマシンです。タイヤはダンロップのAT81EXで、ガレ場でずいぶん楽ができました」

高師永潤
「ありがとうございます。久しぶりに出たんですけど、今日は本当にコースが難しくて、転倒も多くて、でも最後まで楽しく走れて本当によかったです。応援してくださったみなさん、ありがとうございました」

西岡俊康
「応援してくださったみなさま、ありがとうございます。来年からはFUN-Cクラスで頑張りたいと思います。Bクラスもそうなのですが、Cクラスもすごい激戦区なので、頑張っていきたいと思います」

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また、FUN-GPのウィメンズ部門トップカテゴリーFUN-WAクラスには全日本モトクロスレディスから神田橋芽が参戦。「ずっと興味があって、出てみたいと思っていた」と。弟である神田橋瞭もCOMP-Aクラスにエントリーし、姉弟でAAGPを盛り上げてくれた。

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神田橋は好調なスタートを切ると菅原悠花、石本麻衣を抑えて一周目をトップで周回。しかし2周目には菅原悠花が前に出ると、次第に神田橋を引き離し、逃げ切りの体制に。年間チャンピオンを決めている石本麻衣は転倒を喫し、ゼッケンカウルを失ったまま追い上げのレース。菅原、神田橋、石本の順でゴールとなった。

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FUN-WBクラスでは選抜ワイルドクロスでCOMPライダー用の大タイヤ越えを披露した川田いづみが優勝。FUN-WDクラスは松永望。松永は第4戦ジョニエルGでも優勝している爺ヶ岳を得意とするライダー。

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菅原悠花
「ありがとうございます。最後の最後に勝てて本当に嬉しいです。コースもすごく楽しくてずっとアクセル開けられたのでよかったです。また来年も頑張りたいと思います」

神田橋芽
「お疲れ様です。普段は全日本モトクロス選手権に出ているのですが、今日は初めてJNCCに出るということですごく楽しみにしていたのですが、予想以上に楽しくて。また機会があったら出たいと思います」

川田いづみ
「昨日ワイルドクロスでかなり燃え尽きてしまって、爺ヶ岳で下見しないでレースに出るのは初めてだったので怖かったのですが、年甲斐もなく頑張ってしまいました。今年はあまりJNCC出られなかったのですが、来年は積極的に出て、無理なく怪我なく楽しく走れたらいいなと思います」

松永望
「前回出た時はバイクが壊れてしまったので、今回は無事に完走できてよかったです。ありがとうございます」

COMP-GP

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JNCCのメインレースであるCOMP-GPはキッズ&トライやFUN-GPの表彰式が終わったあと、午後から開催される。COMP-AからCOMP-Rクラスがゼッケン順に整列したスターティンググリッドに、AAライダーたちが一台ずつ紹介されながら入場してゆく。派手にウィリーをして観客を楽しませる者や、じっくりグリッドを見定めて、ゆっくりとスタート位置へ向かう者など様々だ。

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リッキーと小池田がほぼ中央、ややイン側に渡辺、さらにインに斉木という位置からそれぞれがホールショットを伺う。
1コーナーに飛び込んだのは真田治、石井正美、渡辺学。しかし立ち上がりが早かったのはやはり、リッキーと小池田。絡み合うように2コーナーへ飛び込むとみるみる間に後続を引き離していった。渡辺は1コーナーで不運にもリッキーと接触、転倒を喫しクラス最後尾となってしまった。

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リッキーがさすがのハイペースで先頭を走り、小池田が秒差であとを追う。しかし、ロックンロールリバーに入ったところで小池田が痛恨の転倒、リッキーとの差が大きく開いた。斉木達也が小池田に追いつき、バトルしながらウッズに突入するが、斉木達也は下見の時間が取れておらず、ラインを探しているうちに小池田が引き離した。

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リッキー・ラッセルはそのままトップを快走し、2位以下に10分以上の差をつけCOMP-AA1優勝。2位には序盤のハイペースでスタミナの限界を迎えつつも気合いで走りきった小池田猛。3位にスタートの転倒から驚異の追い上げを見せた渡辺学が入った。

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リッキー・ラッセル
「最初からリードができたので少し安心しました。小池田さんが迫ってきたのでちょっと失敗したんですけど、コースもよかったですし、楽しいレースができたのでとてもよかったです」

小池田猛
「応援ありがとうございます。スタートからリッキーの後ろにつけて走れたんですけど、最初からすごく飛ばしていて付いていくのに転んでしまって離されてしまいました。今回は2位だったんですけど、シリーズ優勝もできて、本当にハスクバーナチームとスポンサーの皆さんのおかげです。ありがとうございました」

渡辺学
「みなさんお疲れ様でした。何度も転んで楽しかったです。来年はどうなるかわかりませんが、もうちょっと走れるように準備をして来年を迎えたいと思います。ありがとうございました」

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COMP-AA2クラスは来日したレオナルド・ライアンを抑えて渡會修也が優勝し、怪我からの復帰をアピールした。ライアンは2位となった。

渡會修也
「ちょっと総合順位は振るわなかったので不本意なのですが、怪我から復帰してまともにレースを走り切れたことに今は満足しています。来年は出る以上はコンスタントに総合1桁に入れるように頑張りたいと思います」

レオナルド・ライアン
「みなさん本当にありがとうございました。マシンを用意してくださったハスクバーナジャパンに感謝しています。コンプガレはとても難しくて、数え切れないほど転んでしまいましたが、チャンスがあったらまた挑戦したいと思います」

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COMP-Aクラスは村上洸太、中島敬則、鎌倉大樹のモトクロスIAライダー3人がトップ争いを展開したが、じわじわと順位を上げてきた阿部佑哉がラスト一周で中島敬則を抜き去り優勝。2位に中島、3位にはやはり中盤から順位を上げた神馬匠が入った。初出場の神田橋瞭は6位。

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COMP-Bクラスは阿部と同じMOTOCOWBELL RTの鈴木勝博が優勝。シーズン中盤からメキメキと成績を伸ばしてきた鈴木は、ついにこの最終戦でクラスランキング1位に躍り出た。

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COMP-Rクラスは今シーズン4勝目となる大出和弘が優勝。初出場の新沼光は慣れないクロスカントリーに苦労しながらも中盤までクラス1位を走行していたが、転倒とマシントラブルが重なり3位。

阿部佑哉
「お疲れ様でした。今回もなんとか勝つことができました。またチーム員と表彰台に立つことができて本当に嬉しいです。ありがとうございました」

鈴木勝博
「お疲れ様でした。ありがとうございました」

大出和弘
「前回の糸魚川ではパンクしてしまって全然走れなかったので、今回は絶対に優勝したいと思っていました。来年も頑張りますので、応援よろしくお願いします。ありがとうございました」

Written by ANIMALHOUSE