JNCC Rd.7 AAGP最終戦 怪物ストラングに立ち向かう!

 2013年の全7戦もいよいよフィナーレ。最終的に658台ものエントリーを集め、昨年よりも大幅にパワーアップしたAAGPであったと言えそうだ。天候は、薄曇りといったところだが、雨の天気予報からくらべれば圧倒的にグッド。昨年同様の美しい紅葉に染まった爺ヶ岳スキー場がライダー達を出迎えた。今回から、遠隔地(ガレクライム)からの中継が本部前で流され、トップライダー(今回は田中太一)に装着したヘルメットカメラも中継。また、本部近くでもう1カメラあり、これら3カメラはUSTREAMで会場にいない人が観戦可能だというLIVE TVも開始。ただし、COMP GPではヘルメットカメラは不調で、ガレクライム上も半分ほどの放映。電波の調子によるものだとのこと。2013年12月に、爺ヶ岳にはドコモのXiが配備されるとのことなので期待したい。
 今年のゲストライダーは、ロリー・ミード。事前に発表されていたクリス・バックは、最終戦を終えるとランキング3位というすばらしい結果だったのだが、事情により来日はキャンセル。ミードはランキングこそ13位であるものの、ニュージーランド出身の実力者で、優勝経験もある。だが、この男、ジョシュ・ストラングにはかなわなかった。ランキング4位、かつてチーズナッツパークでのAAGPでも来日しており、日本のライダーたちを震撼させたオージー。先だっておこなわれていたISDE2013のサルディニアでは、当たり前にゴールドメダル。いや、そもそもオーバーオールで7位という強烈な成績を残している(日本勢は、オーバーオール2桁のライダーが不在である)。
 迎え撃つ日本のライダーも、事前に公表されたとおり豪華なモノであった。ご存じエルズベルグロデオを4度完走している田中太一、そして元モトクロスファクトリーライダーである釘村忠が、特別にエントリー。渡辺学は「一度はゲストを抜きたい」と燃え上がり、鈴木健二も新型のYZ250Fをエンデューロ用にモディファイして、JNCC初投入となった。また、一昨年JNCCのスーパールーキーとうたわれ、昨年からは全日本モトクロスに活躍の場を移し、その全日本で今季IAルーキーながらもIA2でのヒート優勝を飾った能塚智寛が凱旋ともいうべきスポット参戦。
 ストラングは、GNCCでライドしているKX450Fではなく、このJNCCではKX250Fチョイス。RG3のゲストということもあって、サスペンションは現地のレシピをとりよせて日本で組み替えた。ストラングによれば「いつもの450ccとは特性がことなるので、ちょっと違和感があるけれど、そこそこのセッティングが出せたと思うよ」と上機嫌。持参したのは、自身のロゴが入ったハンドガードのみで、あとは日本にあるものを指定。ハンドルはレンサルツインウォールに変更、リアホイールは19インチのままで旋回性を重視したとのことであった。会場入りする前に、GAIAでセットアップしたのだが、スタート練習をくりかえすほどの気合いの入れようであった。
 ミードは、KTMの450SX-Fにライド。こちらは、すでにビッグタンクに変更してある車両を使用するが、サスペンション前後を空輸してもちこんだ上で換装。「モア・ソフトリー」だとのことだ。リアタイヤは同じく19インチのまま。FMFのサイレンサーは、何度もバッフルの調整をしていた。
 日本勢のマシンは、鈴木健二のYZ250Fはテクニクスとの協力によって事前にエンデューロ用にモディファイされているとのことだ。ビッグタンクはぎりぎり間に合わなかったとのことで2回給油の作戦をとる。エンジンは特に「いじる必要もないので、スタンダードのまま」だとのこと。田中太一は、事前にコースを見てあわててサスセッティングを変更をしていたようだ。
 FUN GPでは、本原万が久々に気を吐いた。借り物のKTMで参戦するも、追い上げて山本正らトップ集団を追い抜いての勝利である。また、この最終戦までもつれ込んだタイトル争いは、山本正が今季で2連覇を達成した。85ccで参戦し続けた岩井良宏がランキング3位というのも見逃せないポイントだろう。FBでは櫻井隆仁、FCは小原靖弘が優勝。FDでは越智貴志、WAでは全日本モトクロスなども走っている石榑瑠花が、WBは高橋美千代、WDは杉浦慧がそれぞれ優勝だ。
 COMP GPは、田中太一のまさかのホールショットから幕開け。小林雅人との激しいポール争いでマシンをアウトからかぶせながら、AAならではのラフファイトが繰り広げられる。そのまま、全開でゲレンデをのぼる田中を、ミード、ストラングが追う。渡辺学と鈴木健二は大きく出遅れ、AA最後方からの追い上げを強いられることとなってしまった。
 そのままガレクライムまでは田中を先頭にレースが進行するものの、この難所で一気に「ガレのスペシャリスト」ことミードが前に出る。能塚、ストラングもがこれに続く。しかし、能塚も転倒でおいて行かれてしまい…、いよいよゲストのペースかと思いきや、気を吐いたのは渡辺だ。グイグイと順位を上げていく。ミードはマシンに不調を抱え後退、ストラングが快走するなか、渡辺はいよいよストラングとの差40秒まで迫る。「自分でも意識しながら走ってました。転倒しないように気をつけてただけですけどね」という渡辺は、残念ながらこの周でクラッシュしてストラングを逃してしまう。
 そのあとは、ストラングの独走であった。ストラングは、決してガレが速いなどの特徴にあふれていたとは思えず、確実にガレクライムを上り、淡々とタイムを刻んでいく。日本のヤングガンたちの多くは、この爺ヶ岳でどういうわけか自分の走りを失い追い下がってしまった。結果、ストラングが優勝、渡辺、鈴木と続くリザルト。4位はなんと久々のクロスカントリーであり、過去爺ヶ岳は大きく順位を落として苦手と思われていた能塚であった。これによって、AAクラスはチャンピオンを鈴木に決定。
 Aクラスは、前橋孝洋が井上雄介を下してみごと優勝。さらに、総合でも6位に入るという快挙でクラスチャンピオンを獲得。優秀の美を飾ったと言えるだろう。また、Bクラス初優勝の山橋隆は総合で13位とこれまた驚異的な成績を残している。爺ヶ岳と難所系タイヤとの愛称は非常にいいと言われており、前橋や山橋、井上らもIRCゲコタや、VeeRuberのタッキーを履いている。一部ではこれこそが、今回の大荒れの理由だというウワサもあるものの、それではストラングや渡辺、鈴木らの活躍が説明できないと言っておくべきだろう。
 

Written by ジャンキー稲垣

日本のクロスカントリー、エンデューロを追い続けます!

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